1972年に、ピーター・ロードとデヴィッド・スプロクストンの2人が創業したストップモーション・アニメーション専門スタジオ。イギリス西部最大の街ブリストルに居を構え、映画はもちろん、テレビ、CM、ミュージックビデオなど、幅広いジャンルの作品を作り続けている。世界各国のアニメーション賞を受けているほか、映画界最高の栄誉である米国アカデミー賞®も4度の受賞を果たした。
ブリストルにあるアードマンの社屋はヘッドクォーター(本社オフィス)と撮影スタジオとなるアズテック・ウエスト・スタジオ。同じ場所にはないのだが、街がそれほど大きくないために簡単に行き来できるようになっている。撮影はすべてアズテック・ウエスト・スタジオで行われるが、いくつものセットが組まれ、同時進行している。ブリストルにおいてアードマンは地元の名誉的な存在で、老若男女に愛される企業。取材時に地元博物館MShedで開催されていた「アーリーマン」の展示会は、なんと会期前に前売り券が売り切れていたほどだ。
監督やプロデューサー、ストーリーボード・アーティストらのミーティングを重ね、ストーリーのアイデア出し。この作業がもっとも重要。時間をかけて練り上げることで、国や性別、年齢を超えて受け容れられる作品が生まれる。本作における挑戦は、宇宙人のルーラの超能力と、いたずらっ子なだけでとどまらないショーンたちのキャラクター設定など、世界観が広がった分、これまでにないチャレンジをいくつもしている。
物語ができあがったら、ストーリーボードが作られ、これに基づいてモデルを作成していく。モデルは粘土やシリコンなど、さまざまな素材をキャラクターによって使い分け、目、鼻、口、耳などの顔のパーツはもちろん、胴体や腕、足など、キャラクターによって違う可動パーツを制作。それを撮影時に組み立て、一コマずつ動かしていく。何度も動かすパーツは壊れやすいために、スペアが大量に用意されるいっぽう、動いているようでじつは動いていないパーツは硬い素材を使うなどの工夫がされている。
本作最大の特徴は、これまでのアードマン作品で採用されていた1.85:1のアスペクト比を、シネスコサイズの2.35:1にしたこと。これによって、より広がりがある景観で映画らしい表現を実現できるようになるのだとか。本作での最大のセットは、宇宙人探知省の秘密基地。むき出しのコンクリートに囲まれた基地は、天井までの高さがあるために、巨大なスペースを必要としている。また、スーパーマーケットのシーンで使われたセットは、よく見るとおのおのの商品のパッケージまで作り込まれている芸の細かさ。これらのセットにキャラクターのクレイ・モデルを設置し、芝居のモーション指示通りに一コマずつ撮影される。25枚の静止画で1秒の映像となり、80分以上の映像にするには年単位の時間が費やされる。